失敗しないブルーベリーの選び方– 家庭での栽培だからこそ注意すべきこと –

苗木を買いにホームセンターに行くと10種類を超えるブルーベリーが並んでいるかと思い迷うかと思います。さらに国内では100種類以上のブルーベリー品種があります。今回は家庭で育てる上でブルーベリー選びで注意すべき点を解説していきます。

目次

ブルーベリーの苗木を買う前にチェックする9つのポイント

日当たりの良い場所があるか

少なくとも1日4時間は直射日光が当たる場所に植えるようにしましょう。ブルーベリーには耐陰性があるため日当たりの悪い場所でも枯れることはありませんが、日当たりが悪いと花芽の形成が進まず収穫量が減ってしまうと共に、果実の味も落ちてしまいます。また、秋の紅葉の色味も悪くなります。

日光は必要なものの、あまりにも夏の西日が強いときには、寒冷紗等と使って避けた方が良いと言われています。

夏の西日については、当園では問題になったこともなく、気にしてません。

2種植えが基本なブルーベリーに必要な場所の広さ

ブルーベリーは1品種だけでは結実しにくいという性質を持っています。1品種でも結実しやすいものもありますが、2品種以上を一緒に育てると実つきが良くなり実も大きくなります。そのため、ブルーベリーの栽培では2品種以上を一緒に育てることが一般的とされ、2本分の場所がひつようになります。

ハイブッシュ系なら1m x 2m、ラビットアイなら2m x 4mぐらいの広さを確保しましょう。

成長後の樹高はハイブッシュで1~2m、ラビットアイで2~3mにもなります。そのため、ハイブッシュなら半径0.5m円が2本分、ラビッドアイなら半径1m円が2本分の広さが必要です。鉢植えで育てる場合も成長に合わせて1~2年ごとに大きな鉢に植え替えていくため、同様の広さが求められます。十分な広さがとれない場合、葉が重なり合って十分に日光が当たらなくなり、収穫量や実の品質に影響が出ます。また、風通しが悪くなって病害虫も発生しやすくなります。

1本分のみで育てる場合は品種を厳選する

育てる場所のスペースや他の植木のバランスで1本しか植えることができない場合もあると思います。その場合には、1本でも実がなる品種を選びましょう。例えば、ハイブッシュ系のデュークサンシャインブルーは1品種でも結実しやすいです。ラビットアイ系では自分の花粉とは受粉しない自家不和合性が強いため、1品種ではほぼ結実しないので注意です。

植えるブルーベリーの組み合わせは開花時期できめる

ブルーベリーを複数植える時には、その開花時期が合うようにします。短いものだと1週間程度しか花を咲かせないため、開花のタイミングがずれると、受粉できずに実がつきません。

まずは同じ系統からブルーベリー品種を選ぶ

同じ系統のブルーベリーは開花時期が重なることが多いです。系統も細分化すると様々なありますが、大きく分類であるハイブッシュ系から2種類以上、ラビットアイ系から2品種以上選ぶとよいです。

さらに各品種の開花時期をそろえるとより確実です。当園でも栽培中のブルーベリーの開花時期を参考にしてみてください。また、調べるのが大変という方は次の開花時期の長い品種を1つ選ぶようにしましょう。

開花時期が長い品種と組み合わせる

同じ系統の中では開花期間がまったく重ならないということは少ないですが、開花時期の長い品種と組み合わせることで容易に受粉するようになります。(例:シャープブルーは4月頭から約1か月開花)

地植え・鉢植えのどちらで育てるか

ブルーベリーは地植えと鉢植えのどちらでも栽培可能ですが、それぞれにメリット・デメリットがあります。

地植えのメリット・デメリット鉢植えのメリット・デメリット
大きく育つ鉢植えの大きさ次第
植え替え不要ほぼ毎年の植え替え
水やりの手間が少ない夏場は毎日の水やり
移動(移植)は大変天候や環境にあわせて移動可

地植えのメリット・デメリット

地植えのメリットは大きく育てられること、水やりや植え替えの手間がないことです。植物の大きさは根の大きさに比例するため、根が張る範囲に制限がない地植えの方が大きく育ちます。また、ブルーベリーの根は繊維のように細いため水切れを起こしやすく、鉢植えの場合夏期には毎日の水やりが必要ですが、地植えであればよほどの猛暑でない限り水やりは不要です。

地植えのデメリットは移動させられないため天候の変化に対応しづらいことや、夏場の草刈りや隣家に枝がいかないように剪定が必要なことが挙げられます。特にラビットアイは大きくなるので気を付ける必要があります。

鉢植えのメリット・デメリット

鉢植えのメリットは天候や環境の変化にあわせて簡単に移動できることです。家庭でブルーベリーを育ててみると、意外と大きくなってしまったり、他の植物が育ちガーデンのバランスが崩れることがあります。そんな時でも鉢植えであれば、容易に配置を変えることができます。

鉢植えのデメリットは水やりや植え替えの手間が多いことです。地植えのメリットのところでも書きましたが、鉢植え栽培では毎日の水やりが必要になります。また、木の成長に合わせて植え替えを繰り返す必要があります。加えて、最終的には大型の鉢が必要になり、一人では移動させられない重さになってしまうこともあります。鉢を大きくしたくない場合は、根の外側を切り取って同じ鉢に再度植えるという方法で成長を抑えることもできます。

住んでいる地域に合わせて、まず系統を選択

北海道から中国地方:ノーザンハイブッシュ
東北地方南部から沖縄:サザンハイブッシュ
関東地方から沖縄:ラビットアイ

ブルーベリーは系統により栽培可能な地域が異なります。住んでいる地域に合った品種でないと生育が思わしくなかったり、枯れてしまったりするので注意しましょう。

  • ノーザンハイブッシュ系は高温多湿に弱いですが、寒さにはマイナス20度まで耐えられます。また、休眠状態から覚醒するための低温要求量が800~1200時間と長いため、中国地方より北であれば育てられますが、東北地方以北の寒い地域での栽培に適しています。
  • サザンハイブッシュ系は耐寒性が弱いものの暑さには強く、低温要求量も400時間と短いため、東北地方南部から沖縄まで幅広い地域で栽培できます。
  • ラビットアイ系も寒さに弱く暑さに強い系統で、低温要求量は400~800時間であるため、関東地方から沖縄が栽培適地とされています。

ハイブッシュ系の収穫時期は7月前半までにだいたい終わりますが、ラビットアイ系は真夏と重なるため暑さの影響を受けやすく、気温35度程度が続くと実が柔らかくなったり干しブドウのようになったりしてしまう品種もあります。ティフブルーやラヒは暑さに強いので、暑さが厳しい地域で育てたい場合にお勧めです。

住んでいる地域に合わない品種を栽培する裏技として接ぎ木という方法もあります。例えば、暖かい地域でノーザンハイブッシュ系を育てたい場合は、ラビットアイ系の台木にノーザンハイブッシュ系を穂木として接ぎます。始めから接ぎ木苗として販売されているものもあります。

ハイブッシュやラビットアイについては「ブルーベリー選びに重要な各系統の特徴を解説」にて詳しく解説してます。

植える場所に雨よけはあるか

ブルーベリーの実は品種によっては雨に濡れて裂果することがあります。

  • 植える場所に雨よけがあると安心です。樹高が高くなると雨よけを越えてしまう可能性もあるので、雨よけがある場合は、樹高があまり高くならないハイブッシュ系を選ぶと良いでしょう。
  • 水はけの悪さの影響も受けます。水はけのよい土を使う、地植えなら畝を作る、鉢植えなら鉢を台の上に置いて風通しをよくするなどの対策ができます。
  • 裂果のしやすさは系統や種類によっても異なるため、雨よけがない場合は裂果しにくいものを選びましょう。
    • ハイブッシュ系はオニール等サザンハイブッシュ系の一部を除いては裂果しません。
    • ラビットアイ系は2~3日雨が続くと裂果してしまい、実の大きい巨大品種ほど裂果しやすい傾向にあります。
    • その他に、実のなり方も影響しており、ぶどうのように房状になるバルドウィンのような品種は裂果しやすく、まばらに実がつくラヒのような品種は裂果しにくいです。

育てやすい品種かどうか

温度の変化や乾燥に強く、生育旺盛で枯れにくいのはラビットアイ系で、土壌酸性度の許容範囲が広いなど土壌適応力が高いのも特徴です。さらに、病気や害虫にも強くハイブッシュ系の半分ほどの労力で育てられます。ハイブッシュ系で育てやすい品種としては、ノーザンハイブッシュ系では耐寒性と土壌適応力の高いブルーレイ、サザンハイブッシュ系では乾燥に強く土壌適応力の高いシャープブルーなどが挙げられます。

他に、長年栽培され続けている品種もお勧めです。ブルーベリーは毎年多くの新品種が発表されますが、その中で長年残るということは育てやすさの証であり、栽培ノウハウが多く蓄積されているという利点もあります。

また、小さい苗に実をつけさせると枯れてしまうことがあるため、すぐに収穫を楽しみたい方は挿し木から3~4年目の大きめの苗を買いましょう。さらに、不慣れな方は専門店で購入すると安心です。樹形が整えられており、買ってすぐ自分で剪定せねばならないという状況を避けられます。

とにかく珍しく特徴のある品種を育てたい

ホームセンターで販売されているのは何十年も前に開発され、品質や育てやすさが一定水準に達している定番品種です。しかし、ブルーベリーは日本国内で栽培用として流通しているものだけでも100種類以上あります。

加えて、味や育てやすさ、収穫量、実の大きさ、香りなどが改良された新品種も毎年発表されます。特にサザンハイブッシュ系では新品種の数が多く、美味しいものが次々に出てきます。また、ハイブッシュ系とラビットアイ系を交配させたハイブリッド系と呼ばれるものもあります。

このように新しい品種や珍しい品種もたくさんありますが、栽培に関する情報が少なく、困った時に自己解決せざるを得ないのがデメリットです。さらに、新品種の多くは特許に保護されたパテント品種と呼ばれるものであるため、専門店でなければ買えないこと、挿し木等で勝手に増やしてはいけないことが多いです。

パテント品種やPVPと書かれているものには注意

結局、おすすめの品種とは

今回説明してきた通り、ブルーベリー選びには様々なポイントがあります。家庭で育てる時には樹木サイズ・地域・栽培場所の広さは確実に守った方がいいと思っていますが、あとは苦労するのも楽しみの1つと思って気楽に育てる良いです。

ただ、初心者の方にあえておすすめ品種をだすなら、こんな感じになります。
ノーザンハイブッシュ系:レガシーブルーレイ
サザンハイブッシュ系:シャープブルーオニール
ラビットアイ系:ホームベルピンクレモネード

※毎年意見が変わるかもしれません(笑)

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